2012年4月21日土曜日

10.SONY のレコード・プレイヤー PS-LX350H について

ソニーのレコード・プレイヤー PS-LX350H を定価より安く手に入れたので、今回はそのレポートを書いてみます。 「350H」という型番は当時の定価が3万5千円だったからでしょうが(分かりやすい)、既に生産中止となっていた製品です。


現在古いレコードはマーケット・プレイスやネット・オークションで少しずつ売っているので減る一方だし、時代遅れの大きく重いアンプは引越しの時に処分して、今ではミニ・コンポかパソコンで音楽を聴いているので、もう時代に逆行するようなアナクロ(Anachronism:時代錯誤)のアナログ・プレイヤーを買うことはないだろうと思っていました。

でも一万円以下のプレイヤー (オーディオ・テクニカのAT-PL30)でシングル・レコードを録音した時、どうもテンポが速いように思えて時間を測ってみたら、4分表示の曲が4秒ほど速かったのが分かってからは、「もう少しちゃんとしたプレイヤーが欲しい」と思うようになっていたのです。 「三万円前後で基本性能のしっかりしたプレイヤーがあれば・・・」と考えていたところ、三万以下の値段だったので思い切って購入することにしました。


届いた箱は、横幅56×奥行46×高さ25cm、重さ9kg.とかなりの重量です。 箱には小さく「MADE IN CHINA」の文字が。 この価格で国産品が届くとは思っていませんが、一応ソニー・ブランドだし、中国製のソニーということで納得しています。

箱を開けてみたところ。 他に発泡スチロールの梱包材と箱で1.5kg.ありました。

本体はプラスチック製ですが、これだけで6kg.あります。 RCA端子のオーディオ・ケーブルは長さ150cmあり、アース線が一体になった3列コードです。 普通にアンプにつなぐだけなら30cmでも足りますが、PCにつないだりすることも考えてのことでしょうか。

出力のRCA端子は金メッキで外に出ているので、太い端子のケーブルでも使えます。 附属のケーブルでは長すぎるので30cmの短いものに替えましたが、問題はアース線の有無です。 
右隣にグランド(アース)端子があり、『アース線は必ず接続するようにしてください。接続しないと、ハム音を発生することがあります。』―と取扱い説明書に書かれていましたが、これは後で実感することになりました。
シールには「November 2010」とあるから、1年半前に生産された製品のようです。

裏側はこんな感じ。  組み立て前だから好きなようにできます。

インシュレーターは形だけのものでなく、ちゃんと震動吸収の役目を果たす造りになっていて、回転させることで高さの微調整ができます。 もっともウチには水準器がありませんが、レコードラックは水平だということにしておきましょう。

追記:
先日レコードの録音中に地震があり、急いでトーン・アームを上げましたが、そのあと録音ファイルを聴き直してみたらその箇所の針飛びは無く、レコードも無事でした。 一応インシュレーターの防振効果と、7.7kg.の重量効果は出ているようです。 2kg.台の安くて軽いプレイヤーではそうはいかなかったでしょう。

ゴム製レコード・マットと、アルミ製ターン・テーブル。


ターン・テーブルは「質量約900g」とメーカーのホームページに書かれていましたが、実際は700gでした。 ドライブ・ベルトの掛かる内径は20cmだから円周63cmですが、ベルトは幅5ミリ、長さ60cmのものが使われています。 一万円以下のプレイヤーの4ミリ幅ベルトより、少し厚めに見えました。 

ゴム・マットは厚さ4ミリ、重さ290gのしっかりしたものが付いていて、ターン・テーブルと一体で1kg.ほどになります。 (マットの型番は、705-DJ1900-078)

スピンドル(回転軸)は縦方向に少し動きますが、横方向には全く動かず、ターン・テーブルを載せてもガタは出ませんでした。

ドライブ・ベルトにはさんであるリボンを引っ張って、ベルトをモーターの回転軸に取り付けたところ。 ベルトに指の脂を付けるとスリップの原因になるのでこうしていますが、昔の人ならどなたもご存知でしょう。

スタイラス(レコード針)は、一万円以下のプレイヤーでよく使われているオーディオ・テクニカ製「ATN-3600L」 で、交換時期はソニーの説明書には500時間と書かれていますが、オーディオ・テクニカでは400時間が目安となっています。


【ヘッドシェルとカートリッジ】

附属のヘッドシェルとカートリッジはセットで15gくらい。


ヘッドシェル単体だと10gほどです。(リード線込み)


カートリッジはスタイラス込みで5gほど。 カートリッジだけだと4gになります。


ヘッドシェルは黒く塗装されていますが材質はアルミみたいで、指かけが一体成型になっています。 私は細かいことの好きな人間ですが、このヘッドシェルはネジの取り付けがやりにくく、取付け穴が貫通タイプなのでカートリッジが簡単に斜めを向いてしまい、ヘッドシェルの中心線に合わせるのが難しかったです。 取付けネジは軽量のアルミ材なので馬鹿締めは禁物だし、総じてあまり良いものとは言えません。
そのうち別のカートリッジを購入するとしても、その時はヘッドシェルももう少し良い物を同時購入するでしょう。 このヘッドシェルでは正直使う気になれません。

ところでこの状態だとスタイラスがかなり突き出す形になり、オーバーハングを測ってみたら20mm.ほどあったので一番後ろまで下げましたが、それでも17mm.までしか調整できませんでした。



パーツをセットして組み上げたところ。 本体6kg.+マットとターン・テーブル1kg.で、更にダスト・カバーが700gありますから、トータルで7.7kg.の重量となります。 インターネットで購入したのですが、実物を見るとやはり大きいですね。 特に安いコンパクト・プレイヤーから切替えてみると、尚更大きく感じます。


ダスト・カバーを普通に開くと55度くらい、全開にすると110度くらい開きますが、カバーが結構重いので中間で停めることはできません。 レコードの演奏中にカバーがバタンと閉まると針飛びを起こすので、閉める時は両手で持って静かに閉めましょう。


ドーナツ盤(シングル・レコード)用のアダプターは、ちゃんと溝に収まるようになっています。 簡単なことなのに、それができていない製品が多いのですね。 上半分の溝が深くなっているので、上側を押すと下側が持ち上がります。


トーン・アームにヘッド・シェルを取り付け、水平を出してバランスをとっているところ。 そういえば、昔はこんなことをやっていたのを思い出しました。 トーン・アームの高さ調整はできませんが、この価格帯では仕方ないでしょう。


 トーンアームの水平バランスがとれたら、バランス・ウエイトを回して針圧(このスタイラスの標準値は2g)を調整します。 右にあるのは「アンチ・スケーティング・ダイヤル」で、針圧と同じ数値に合わせます。 
これは安定したトレーシングを行う「インサイド・フォース・キャンセラー機能」、つまり「トーンアームが内側に引き込まれる力を抑える機能」ということで、ダイヤルが「0」の時はトーンアームがフリーの状態でフワフワしていますが、ダイヤルを時計方向に回すと軽くブレーキがかかった状態になり、トーンアームの動きが少し重くなります。 (針圧は4gまで調整可能)

右上にある穴は「ヘッドシェル・ホルダー」で、別のヘッドシェルとカートリッジを手に入れたら使う時もあると思います。 (予算を使い果たしたので、今のところ予定無し)

アーム・スタンド(アーム・レスト)には簡単なトーンアーム・ストッパーが付いていますが、細くて折れそうなので無理な力はかけないようにしましょう。


上が電源スイッチ兼ストロボランプ・スイッチで、下の「START」ボタンを押すとターン・テーブルが回ります。 ターン・テーブルに付けられている4列のドットは回転数を目視するためのもの。 
上の二列が50Hz(東日本)、下の二列が60Hz(西日本)用となっていて、それぞれ33(+1/3)回転/45回転用となっています。

「STOP」ボタンを押すとピタッと回転が止りますが、ターンテーブルにベルトを掛けない状態の時はゆっくりと回り続けますから、これはきつ目のベルトやモーターの回転抵抗によるものでしょう。


ターン・テーブルを回しているところ。 ストロボ光によってドット(点)が止って見えるように、右にあるピッチ・コントローラーをスライドさせて調整します。
ゴム・マットが真円ではないので、小さいEPレコードを置いて回すと歪(いびつ)なのが少し気になるかも。 このマットだけかもしれませんが・・・


右側にあるのが、ピッチ・コントロール・セレクター。 つまり回転数調整ボリュームといったところでしょうか。 真ん中の「0」のところで少し引っかかるようになっていて、手前の+(プラス)側にすると回転が速くなります。
目盛りは「10」までありますが、実際は「+2」~「-2」あたりで動かすことがほとんどだから、かえって微調整がやりにくいです。
使ってみた感じとしては、回し始めはスピードがやや速くなり、回転が安定してくると少し遅くなる傾向があるので、あまり神経質にならず回転が安定してから録音するようにしています。

手前にあるスイッチは、左が33回転、右が45回転のボタンで、赤いランプが付くので分かりやすいです。

これはマニュアル機ですが、真ん中にある「キュー・レバー」(アーム・リフター)はトーンアームを上げ下げしてくれるので便利です。 回転しているレコード盤の上に指でレコード針を降ろすのは結構技術がいるのですが、これがあるだけでも余計な神経を使わずに済みます。
フルオート・プレイヤーといっても、一万円以下のオモチャみたいなプレイヤーだと「ガチャコン・ガチャコン」とうるさく使う気にならないので、これがあれば充分です。


ターンテーブルは斜めで高さがあるので、LPレコードの縁(ふち)に指が掛けやすい形になっています。 窮屈なコンパクト・プレイヤーに比べると、その点ではやはり使いやすいですね。 (使わない時はデカくて邪魔だけど・・・)


設定と接続が済んだので、早速レコードに針を落として聴いてみることにしました。 
このプレイヤーにはフォノ・アンプが内蔵されておらず、現在ウチにはまともなアンプが無いので、オーディオ・プロセッサー(サウンド・デバイス)の切り替えスイッチを「PHONO」入力にして、デバイス内蔵のフォノ・イコライザーを使ってみました。 でも期待に反して、出てきたのはノイズだらけの音でしたが・・・

【やっぱりアースは大切でした】
国産品に慣れているとアースのことを忘れがちですが、外国の製品には電気がリーク(漏れる)していて感電しそうなモーターとかもあるので、試しにアース線をつないでみたらノイズはきれいに消えました。 それで本体裏やオーディオ・ケーブルにアース端子が付いていたのですね。 (後で説明書を読んだら、ちゃんと書いてありました) 


【音の違いについて】
スタイラス(レコード針)はこれまで使っていたオーディオ・テクニカの AT-PL30 に付いていたのと同じ 「ATN-3600L」で、カートリッジも同じように見えますが、針が新品というだけでも結構良く聴こえます。 同じ料理でも器や盛り付け方によって良く見えるのと似ていますが、それでは正しい評価はできないので、実際に両方で録音したファイルや波形を比べてみることにしましょう。

特に廉価版プレイヤー AT-PL30 はシングル・レコードの回転数が速すぎるということがあったので、同じドーナツ盤での録音比較をしてみました。
プレイヤーの回転速度を比べてみるのに丁度いい曲として、先日古い方のプレイヤー AT-PL30 で録音しておいた曲で5分36秒のものがあったので、それで比較してみます。 (使った曲は、デビッド・ボウイの「ビギナーズ」です)

※クリックで拡大
上は古いプレイヤーで録音しておいたファイルを開いたもの。
下は新しいプレイヤーで新たに録音してみたものです。
同じ曲を録音したから同じ波形になって当然なのですが、良く見ると下の方が少し長めなのが分かるでしょうか。 それと、古い AT-PL30 で録音すると、右チャンネルの方がいつもレベルが高くなっていたのですが、新しい方のプレイヤーでは左右のバランスがほぼ同じレベルになっていました。(画像をクリックで拡大してみると分かります)

どちらも曲の頭に1秒ほどのブランクを入れて長さを測ってみました。 曲の終わりで無音状態になったところでストップして、カウンターでタイムを調べてみたのが下の画像です。

※クリックで拡大します
こちらは以前古い AT-PL30 で録音しておいたもので、 「5分30秒」となっています。


こちらは新しい PS-LX350H で録音したもので、「5分35秒」となりました。 終わりにも1秒のブランクを入れると、ちょうどレコード表示の5分36秒になります。 ちなみにターンテーブルの回転速度は、今回ほとんど調整の必要がありませんでした。


これは両者のウェーブを引き伸ばしたもの。 聴き比べてみてもスタイラスが同じだから、音質の方にそれほどの違いは感じられませんでした。 ただし AT-PL30 は1分で1秒ほど回転が速かった訳で、テンポは確実に速く聴こえます。 それだけでも時間を測ってみた甲斐があったというものでしょう。

次回はカートリッジを替えての聴き比べをやってみたいのですが、そちらは予算がないとできないことなので、いつになるかは分かりません。 消費税が上ったらますます無駄な買い物はできなくなりますから、ここらで終わりにしておきます。

【まとめ】
三万円前後で手に入るアナログ・プレイヤーとして、コスト・パフォーマンス(価格に見合った性能)が最も優れているのは本機でしょう。 基本性能はほぼ満足できるものなので、これ以上のものを望む場合はグレードの高いカートリッジに付け替えれば良いだけです。 五万円ほどのプレイヤーでも附属のスタイラスはこれと大して変わりませんから、その差額分で名器と言われる二万円前後のカートリッジを購入することもできます。 
でもそうした微妙な音の違いを引き出すにはそれなりのアンプやスピーカーが必要で、それ以上にそうした音の出せる住宅環境が必要となってきます。 ミニ・コンポやパソコンにつないで周囲に迷惑のかからない程度の音量で音楽を楽しむだけなら、現状のスタイラスのままでも充分でしょう。 (決して悪い針ではなく、価格の割には良い製品だと思います)
まだニーズはあるのだから、ソニーさんも再発してみてはいかがでしょうか。
2012年5月5日 記す